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ID M1313001
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URI
タイトル 盆行事の歴史的変遷と地域受容-長崎県の事例を中心に-
別タイトル
著者
一瀬, 勇士
別府大学大学院文学研究科文化財学専攻
日付
出版年:  - 
作成日
更新日
記録日: 2016-05-18
形態
上位タイトル
修士論文 (2015. )
識別番号
DOI
URI
抄録 本稿は年中行事の中でも正月行事と並んで、日本人には欠かすことのできない行事の一つである「盆行事」をテーマとして取り上げ、盆行事を通して現代社会が抱える諸問題を民俗学的なアプローチから明らかにしようと試みた研究である。
盆行事は、家々の「先祖供養」を基礎としながらも、時代の変遷とともに、複雑な様相を経て今日に至っている。特に盆の時期にみられる一連の習俗は、地域によってその分布や形態も様々である。こうした盆行事には、暮らしの中で人々が脈々と紡いできた「イエ意識」や生活文化ととともに、日本人の「他界観」や「祖霊信仰」の本質を垣間見ることができる。
しかし、「イエ意識」の変容や地域との結びつきが希薄化する現代社会においては、先祖供養の捉え方も様変わりしつつある。その一例としては、祀り手がいなくなったいわゆる無縁墓(仏)の増加があげられる。また、故人の位牌を祀る仏壇、土地を守護する屋敷神、イエの屋内神を祀る神棚などは、建物の洋風化や核家族化といった様々な社会構造の変化により、その形態を失いつつある。更には、葬送儀礼のサービス化・簡素化によって、代々受け継がれてきたイエを中心とする「先祖供養」は、今後ますます衰退の一途を辿ることが懸念されるのである。
こうした現状を踏まえ、本稿ではまず、民俗学の大家である柳田國男が著した『先祖の話』を基礎資料とした先学の先行研究を参考としながら、改めて盆行事の歴史的変遷を振り返り、日本人が盆に訪れる霊魂をどのように認識し、関わってきたかについて論じることとした。
第1章では、古代から中世、近世から近現代までの盆行事の歴史を通史的にまとめ、時代とともに複雑に変容してきた日本人の「先祖供養」や「死生観」をキーワードとして、多様化する盆行事の実態を明らかにした。
次に取り組んだ視点としては、盆行事が具体的にどのような多様性と地域性を含んでいるものかを明らかにするため、日本全国に伝承する盆行事の事例を地方別に紹介した。
従って、第2章では、全国に伝わる盆行事の中でも特色ある事例を取り上げ、柳田國男が提唱した民俗事象における比較研究法(方言周圏論)を用いながら、盆行事の地域受容を考察するものとした。その結果、日本各地に伝承する盆行事の多くに、いくつかの類似性と地域的特色を見出すことができた。
類似性としては、霊魂の迎えよりも送りを重視した習俗が多いことなどがあげられる。また、地域的特色としては、墓地に置ける饗応の有無や霊魂の差別化に伴う屋敷内における盆棚の位置関係である。
2章での考察から盆行事には、地域性と文化受容の関係性が認められる一方で、盆行事に参加する人(若者、演者、祀り手など)が相対的に減少し、伝統ある行事の存続が喫緊の課題として浮かび上がっていることが明らかとなった。
こうした状況を鑑み、日本の最北端に位置し、その地理的な条件のもと、大陸との交流の窓口として中国や朝鮮半島、さらには西洋からさまざまな文化を受容し、独自の文化を育んできた長崎県の伝統行事に注目することで、地域性と文化受容の関係性を示すモデルを提起できるのではないかと考えた。
第3章では、長崎県下に伝わる盆行事の事例を4つの地域に大別し、その特徴と芸能形態について論じた内容となっている。
 具体的には、北部地域(平戸・松浦・佐世保)、県央地域(大村、島原)、県南地域(長崎市・野母崎地区)、島嶼地域(五島・壱岐・対馬)である。
 この3章から得られたものとしては、長崎県の盆行事を地域性と文化受容の関係で見ていくと①精霊流しを主体とする地域(長崎市、島原市、大村市)、②念仏踊りを主体する地域(平戸市、五島列島)、③盆踊りを主体とする地域(対馬、野母崎地区)、④綱引きを主体とする地域(壱岐市)、これに特殊事例として、長崎市内の唐寺内において行われている中国盆を加えた5つのパターンに分類可能であることを導き出した。しかし、一概にこのパターンに当てはまらない地域もあるため、長崎県における盆行事の特色を裏づけるには更に文献資料などからの考察と地域情報の聞き取り調査が今後の研究課題として残った。
 本稿を遂行するにあたり、改めて日本における盆行事の意味や先祖から脈々と受け継がれてきた伝統を未来に伝承していくことの重要性を再認識できたと感じている。
「死」というものが世俗化し、個人化しつつある現代社会において、日本人の霊魂観念は様変わりし、多くの儀礼が簡略化されてきた。その弊害は、日本人のアイデンティティの喪失であろう。柳田圀男が自身の集大成として書き上げた『先祖の話』には、日本人のアイデンティティが論じられている。
毎年、お盆の時期になると日本人の民族大移動とも言うべき現象が日本各地で垣間見られる。その移動先の多くは、自分たちの故郷であり、離れ離れに暮らす家族との再会を目的としたものである。
核家族化が進む中で、自分自身が生まれ育った故郷へ帰省することは、自分自身への原点回帰でもあり、地域コミュニティに対する存在意識を高める場ともなっている。
盆行事にはもう一つの再会が見られる。それこそが今は亡き先祖の霊魂である。今を生きる家族と今は亡き家族。盆行事にはこの2つの両面性があり、「死生観」さらには「家族意識」を高める役割を担っていた。
盆行事は、身近な人の「死」を改めて見つめ直す機会であり、今を生きていることへの感謝を示す場であったように思う。それを裏づけるものとして、日本古来の習俗として受け継がれてきた、生身魂の存在が物語っている。だからこそ、盆行事には、人の「生」と「死」を問うだけではなく、自分自身のアイデンティティを再認識する場であったいえるのではないだろうか。
キーワード
NDC
注記 平成27年度修士論文要旨のみ
言語
jpn
資源タイプ text
ジャンル Thesis or Dissertaion
Index
/ Public / 修士論文 / 文学研究科 / 2015
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